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パンのために生活のどん底まで沈みきった十年の月日--それは短いものではない。たいていの人はおそらくその年月の間にそういう生活からはね返る力を失ってしまうだろう。世の中を見渡すと、何百万、何千万の人々が、こんな生活にその天授の特異な力を踏みしだかれて、むなしく墳墓の草となってしまったろう。それは全く悲しいことだ。そして不条理なことだ。しかし誰がこの不条理な世相に非難の石をなげうつことができるだろう。これは悲しくも私たちの一人一人が肩の上に背負わなければならない不条理だ。特異な力を埋めつくしてまでも、当面の生活に没頭しなければならない人々に対して、私たちは尊敬に近い同情をすら捧げねばならぬ悲しい人生の事実だ。あるがままの実相だ。 ~『生れ出づる悩み』より


— 有島 武郎


#life



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